またまた映画鑑賞の感想です。
今回は、「コーラス」という映画。2005年度アカデミー賞2部門(外国語映画賞・主題歌賞)、ゴールデン・グローブ賞、セザール賞8部門にノミネートされた感動作で、今回も「映画っていいな〜」と嬉しく思いました。
まず、このストーリーですが、1949年(第二次世界大戦が終わって間もない頃)
フランスの片田舎、貧しい親元を離れて寄宿学校で暮らす子供達。
誰も会いに来てくれない面会日、帰る家のない夏休み。そんなある日、1人の音楽の先生がやって来た。
先生は、寂しさをいたずらで紛らわす彼らを、叱るかわりに歌を教え、歌うことで希望と笑い声を取り戻す子供達。
その中に、"奇跡の歌声を持つ少年"ピエールがいた。
彼こそ、学校一の問題児だったが・・・。
物語は、この主役ピエールと先生を中心に展開していく。
傷つき易い思春期の少年の微妙な変化と、歌うことによって、主人公のピエールとその収容されている少年達の「心の発達」を見事に描き出している。
「先生、僕たちの歌声はママに届くかな・・・。」
たった一つの願いを歌に込め、心を一つにして歌うコーラス・・・。
この子供達の純粋な歌声がフランス中のハートを掴んだのです。
そして、何と言ってもこの作品の魅力は、主演のピエール役の13才のジャン=バティスト・モニエ少年。
「フランスに降臨した天使」とも言われる柔らかな金髪と水色の瞳。
そして、「神様から授けられた」というボーイソプラノの美しさは、観る者・聴く者を陶酔の世界に導いてくれる。
実はモニエ少年は、実在するサン・マルク少年少女合唱団に所属しており、その歌声は「この映画の成功は、彼の声に支えられていると思う」と、監督も認める"本物"。
私が最も感動したのは、この本物の「音楽」というものが、こうも少年達の心を捉えて離さないことを描いた部分でした。
そして驚いたのは、この名作、とびっきりの感動作を、フランス人の7人に1人の人が観たということ。2004年のフランス動員記録の第一位で、870万人がこの映画を観るために映画館に足を運んだそうです。
良い作品がまずありきなのですが、良い作品を評価する目があって、より多くの配給が生まれ、海を越えて、はるか日本の観客の目に触れることができます。
ひとのこころを打つ作品は、偶然生まれるものではなく、映画の質は映画ファンの質に比例するのではないでしょうか。また、国や企業などの文化的な支援環境が整っていませんと、より多くの映画ファンの質を育てることは難しいと思われます。
邦画の現実を考えると、この底辺の広さ、国や企業などの文化的な支援環境や、映画ファンの質こそ、良い映画を生み出す基本であると思わざるを得ないのですが。
そして良質な作品は、良質な原作・良質な脚本・良質な演出・良質な演技がもちろん必要ですが、その製作者の表現したいという気持ち、ほとばしる情熱が奇跡を生み出すのだと思うのです。
その情熱をどう表現していくか、生みの苦しみの努力の積み重ねが映画祭で認められ、多くの人々に鑑賞してもらえることが、制作に携わった人々の夢でしょうね。
また、次の奇跡を生む挑戦に、芸術家の皆さんをかり立てるのではないしょうか。
それにしてもあらためて、「映画っていいな〜」。
心を豊かにしてくれます。
「コーラス」オフィシャルサイト
http://www.herald.co.jp/official/chorus/
秋鹿 博
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