「WPPD(世界平和を祈る地球感謝の日)を終えて」
2004.7.7

 台風6号が日本列島に近づいた6月19日(土)、WPPDが開会し、台風が上陸し暴風雨となった21日(月)、神聖なセレモニーをもって閉会しました。
 何か、WPPDが台風と共に嵐のように来て、帰ったような不思議な現象でした。
 日本の気候では6月が梅雨に入り、うっとうしい日が続くのですが、まさか、この時期に台風に見舞われようとは思ってもみませんでした。
 
 「世界の先住民の代表が聖地富士山に集い、地球に感謝しながら世界平和を祈る」というこの催しが、私のところに相談があったのは昨年の9月でした。詳細は解らなかったが、その理想的な趣旨に私は感動して、「良しやろう!」とその時は余り深く考えないでお返事をしました。

 いつも「人生意気に感ず」がモットーで、新しい事に挑戦して、今までも結構安請け合いで何でもやってきました。
 しかし、「今度は少し違うぞ」と思い始めたのが今年の2月頃、何を誰がどのように 行うのか、さっぱり見えてこないからでした。
 外国の先住民は何人位、どこの国から来日するだろうか。そして、一般の参加者は何人位来るだろうか、と実行委員会本部に尋ねても、まだ誰も答えられませんでした。そのイメージが掴めなければ、準備の仕様もないのです。
 それも無理もありません。本部の実行委員会の5人のメンバーも初めての取り組みで、その時期は資金の調達の動きを始めたばかりで、どこから手をつけていったらいいのか、五里霧中といった感じでした。
 アメリカ大陸4回、オーストラリアなど他地域で4回、計8回の過去に開催した規模や内容などを参考にするしかなかったのですが、日本では参考とするには難しいことだと思われました。
 やがて大阪に本部事務所ができ、ネイティブ・アメリカンの出版物を翻訳した本出みささんを中心に、海外の先住民との連絡が密になってきました。
 事務局長の海老原美恵さんが、頻繁に開催地である富士宮市に来て、私があらかじめ依頼してあった会場や資材などの、細かな打ち合わせを行いました。
 山口晴康さんは、この集会の最大の目的である「祈りのセレモニー」と、そのエネルギーを導く「祈りのウォーク」を、1200年祭を控えた浅間大社から山宮、人穴の浅間神社を経由して朝霧アリーナに入る「地球感謝の日」の一日をプロデュースし、度々会場と浅間大社とを行き来し始めました。
 岡野幹弘さんは、なぜ今、世界の先住民の歴史や文化に学ばなければならないのか、現代社会の矛盾を解くカギが、宇宙の法律と自然の摂理に従って生きている「先住民の生き方・哲学」にあるのではないか、これらの民族学や生態学の研究に携わっている大学教授群と相談して、「四回にわたるシンポジウム」を企画しました。
 
 招聘する先住民の代表の交通費及び滞在費、運営諸経費は約2,000万円が見込まれました。これをすべて協賛金・寄付金・カンパで賄わなければなりません。
 5人の実行委員事務局は、赤字になったら5等分して負担するという覚悟で挑みました。この意気込みに私も感動し、地元としても資金の捻出をしなければならないと考えました。
 これが、「前夜祭チャリティライブ」を開催したキッカケとなり、先住民の素朴な音楽・歌と踊りを市民の多くに見てもらい、WPPDを理解してもらおうと計画したのでした。
 この過程で、会計であり全体の機材や物資の調達を担当した海老原良行さんと、電話やメールのやりとりをしました。良行さんは美恵さんの夫であり、舞台監督をして、音楽イベントの「朝霧ジャムフェスティバル」にも仕事として参加していたので、地元の朝霧高原の事情に詳しく、大変助かりました。
 ストーリーテーリングでは、古屋和子さん、木皿みえさんの二人が中心になって、野外活動センターのキャンプサイト・キャンプセンターを最大限に活用し、盛り沢山の企画をしました。
 地元の語りべとして、木村久美子さんもギリギリで参加することになりました。
 馬と人の行進では、富士丘にあるホースマンファーム朝霧の城寺正人さんが、全面的な協力をしてくれました。ネイティブ・アメリカンの5人が乗る馬は、選びに選んで一頭当たり5万円でお願いしました。
 城寺さんは、仲間に呼び掛けて、馬を持っている牧場主や個人がボランティアで16頭参加してくれることになりました。21頭の馬の行進は、壮観で野性的な雰囲気がかもし出され、最高潮に達しました。
 世界平和を祈る地球感謝の日、6月21日(月)は、台風が上陸して朝から生暖かい濃霧の中で、時々強い風が吹いていました。
 しかし、「祈りのセレモニー」が始まった午前8時には、3,000人程の参加者がカッパ姿で集まり、静かに儀式が始まりました。
 何よりも驚いたことは、あの暴風雨の中で、ほとんどが帰らず、終わりの頃には3,600人程にふくれ上がっていました。
 これは、参加者がネイティブ・アメリカンに伝わる儀式で祈りを捧げるという、本来の目的を理解した人々の集まりであったからです。
 もう一つ特筆すべきことは、参加者のすべての人に「フリー・フード」と言って、食事をふるまった事です。
 しかも、全国からお米などの有機野菜の食材をカンパで集めて、ボランティアスタッフが調理して出したのですが、これは本当に大変なことだと思いいます。
 野外活動センターの2ヶ所のキャンプサイトで調理を行い、量も質も通常の食事に比べればシンプルな物でしたが、参加者の方々はみな、とても感謝して食べていました。
 日本のお祭りでも必ずと言って良いほど、「直会(なおらい)」というものがありますが、神様に捧げた「食物」を神様と分け合って、感謝しながらみんなでいただくという作法ですが、素朴な中に人と人の親睦を図るという、どこにも似たような風習があるものだと関心していました。
 最後に、地元のみなさんの協力と、すべての関わった方々、参加していいただいた方々に、改めて感謝の意を伝えたいと思います。
 本当にありがとうございました。